2025年03月19日

西洋ハナズオウが美しく開花するこの季節イタリア・ローマ市の史跡や教会周辺の庭園や緑地の植木の手入れ、ガーデニングなどの視察に行ってきました。西洋ハナズオウは日本でいう大きな桜の木のような存在でローマではたくさんの場所で見かける人気の植木です。春の訪れを街の人々に知らせてくれます。千葉のお庭でよく育てられている低木のハナズオウを桜の街路樹のように枝を大きく伸ばす美しい落葉高木です。


ローマ・フェウミチーノ空港からバスでテルミニ駅(日本でいう東京駅)に降り立ち庭園や緑地、植木の維持管理やメンテナンスの視察に行ってきました。
コンフチョ庭園(Giardino di Confucio)
ローマ中心部の貴重な憩いの中庭庭園(オアシス)ローマ・エスクイリーノ地区に位置するコンフチョ庭園(Giardino di Confucio)は、新しいエスクイリーノ市場内、かつてのサニ兵舎跡地にあります。 この庭園は、2006年にローマ市に寄贈された孔子の像にちなんで名付けられました。かつては荒廃していましたが、住民、学生、そして Respiro Verde Legalberi協会の協力により、植物園として再生され、現在では、大学関係者、地域住民、市場の利用者にとって共有の憩いの場となっています。
庭園内には、管理のされた多種の植木が植えられています。
Ficus Religiosa(ピーパル)
2014年10月23日、インドの祝祭ディワリの初日に、Bhagavat Atheneum協会から寄贈され植樹されました。この木は神聖な木とされているそうです。
柿の木(カキ)
2015年3月20日、1945年の原爆を耐え抜いた長崎の柿の木のクローンが、「Revive Time Kaki Tree Project」の一環として植えられ、平和の象徴となっています。
イトスギ(サイプレス)
2020年11月22日、Living Chapelおよびローマ植物園との協力のもと、自然の調和を称えるプロジェクトの一環で2本の若いイトスギが植えられました。
これらの植栽は、庭園の生物多様性を高めるだけでなく、文化的・歴史的な面を持ち合わせています。また、庭園では音楽、演劇、書籍や植物の交換など、多彩な文化活動が行われており、地域コミュニティや観光客にとって重要な交流の場となっています。
ニコーラ・カリパリ庭園(Giardini Nicola Calipari)
ローマのエスクイリーノ地区に位置するニコーラ・カリパリ庭園(Giardini Nicola Calipari)は、ピアッツァ・ヴィットリオ・エマヌエーレ2世広場の中心に広がる歴史のある公園です。1888年に開園し、以来、地域住民や訪問者に憩いの場を提供しています。
庭園の成り立ちと歴史
庭園は1888年7月に初めて一般公開され、エキゾチックな雰囲気を持つ風景式庭園として設計されたそうです。その後、長い間放置されていましたが、1990年代にモニュメントを含む全体的な修復と価値の向上の取り組みが行われたそうです。
植栽と造園工事について
庭園内には、ヤシ、マグノリア、プラタナスなど、世界各地から集められた多種多様な樹木が植えられており、エキゾチックな雰囲気を醸し出しています。また、美しいバラ園も整備されています。 2018年から2020年にかけて行われた再整備プロジェクトでは以下のような植栽と造園工事が実施されたそうです。新たに42本の樹木、17本のヤシ、450本の装飾植物、250本の新しい花木が植えられました。季節によって美しい花々が見られます。 バラ園の再整備やベンチの設置などが行われました。 3月のこの時期は美しい新緑の芽吹きとたくさんの花の開花が見られました。近隣の屋外レストランの植栽は利用者が四季の変化が楽しめるリラックスして食事が出来るように工夫されています。
主要なモニュメント
庭園内には歴史的・文化的な石造建造物や噴水、門といった重要なモニュメントが点在しています。庭園の歴史的価値を高め、訪問者に多様な文化的体験を提供しています。 マリオのトロフィー(Trofei di Mario):226年、グラウコの噴水(Fontana del Glauco):1910年、魔法の門(Porta Magica):17世紀


ピアッツァ・ダンテ庭園(Giardino di Piazza Dante
ローマのピアッツァ・ダンテ庭園(Giardino di Piazza Dante)もエスクイリーノ地区に位置する約5,000平方メートルの公園で、その歴史とデザインは地域の変遷を反映しています。地上からはわかりづらいですが、上空から庭園を見ると左右対称になっており、中央部分から東西南北に行けるようになっています。
樹木植栽の選定と配置
この広場は1920年代に誕生し、エスクイリーノ地区の発展とともにその姿を変えてきました。庭園内には、高木の樹木や貴重な植物が配置されています。特に、ソテツ(Cycas)、ユッカ(Yucca)、カラブリア松(Carrubi)などの植物が植えられており、人々が庭園を利用しやすいように工夫され、美観と生物多様性を高めています。
庭園のデザインと造園工事
1990年の再整備では、庭園の歴史を反映したデザインが採用されたそうです。特に、テラコッタとトラバーチンで作られた「羅針盤(ローズ・デイ・ヴェンティ)」の舗装デザインは、防空壕の平面図を模しており、歴史的背景を視覚的に伝えています。
庭園内では老朽化した樹木の管理作業が行われています。例えば、2023年11月には、安全上の理由から大きなソフォラの木が伐採されることとなり、地域住民から感謝と惜別の声が寄せられました。 ピアッツァ・ダンテ庭園は、その歴史的背景と独特なデザイン、そして多様な植栽により、訪れる人々にとって特別な場所となっています。コロッセオ・コッレ・オッピオ公園(Colosseo・Parco del Colle Oppio)
ローマのコロッセオ(Colosseo)は約2000年前に作られた世界遺産にも選ばれた巨大石造建造物ですが、その周辺に位置するコッレ・オッピオ公園(Parco del Colle Oppio)は、歴史的遺跡と豊かな植栽空間が調和した都市の中でローマ市民の子供からお年寄りまでのんびりと過ごせる安らぎの緑地となっています。
この公園の成り立ちや樹木の選定、配置についてご紹介します。
コッレ・オッピオ公園の成り立ち
コッレ・オッピオ公園は、古代ローマ時代の遺跡が点在するエリアとして知られています。特に、ネロ帝のドムス・アウレア(黄金宮殿)やトラヤヌス帝のトラヤヌス浴場の遺跡が存在し、これらの歴史的建造物が公園の景観に独特の趣を加えています。
公園の現代的な整備は、1928年に建築家ラファエレ・デ・ヴィーコ(Raffaele De Vico)の設計により開始され、1936年に完成しました。この整備により、公園は現在の形状と構造を持つに至ったそうです。
樹木の選定と植栽配置
公園内の植栽は、地中海性植物と異国情緒あふれる植物が巧みに組み合わされています。
主な樹種とその特徴は以下の通りです:
地中海性植物:松(パイン)、カシ(ホルムオーク)、糸杉(サイプレス)、オレアンダーなどが植えられ、地域の自然環境を反映しています。異国情緒あふれる植物:ヤシの木などが配置され、風景に多様性とエキゾチックな雰囲気を加えています。
古代庭園に由来する植物:バラ、ミルト(ギンバイカ)、月桂樹(ローリエ)などが植栽され、古代ローマの庭園文化を彷彿とさせます。 これらの植物は、公園内の主要な並木道や噴水周辺に配置され、訪れる人々に季節感のある視覚的な楽しみを提供しています。特に、アンフォラの噴水(Fontana delle Anfore)やニンフェウムの噴水(Fontana del Ninfeo)周辺の植栽は、公園のロマンチックな雰囲気を高めています。
近年の再開発と保全活動
現在も公園の再開発プロジェクトが進行中で、特に以下の点に焦点が当てられています。歴史的遺跡の保護:トラヤヌス浴場やドムス・アウレアの遺跡を適切に保存し、訪問者が安全に視察できる環境を整備しています。
植栽の維持管理:公園内の樹木や植物の健康状態を定期的にチェックし、必要に応じて剪定や植え替えを行っています。
公共施設の改善:歩道の整備、照明の設置、ベンチやゴミ箱の配置など、訪問者が快適に過ごせるような設備の充実が図られています。
これらの取り組みにより、コッレ・オッピオ公園は歴史的価値と自然の美を兼ね備えた、ローマ市民や観光客にとって魅力的な憩いの場として維持されています。
ローマ滞在最終日は樹木の古葉取り、除草、落ち葉清掃をさせて頂きました。


国立ローマ大学植物園(Orto Botanico dell’Università di Roma)
国立ローマ大学(サピエンツァ大学)の環境生物学部門が管理する植物園(Orto Botanico di Roma)の視察に行ってきました。ローマのトラステヴェレ地区、ジャニコロの丘の斜面に位置し、約12ヘクタールの広さの場所にあります。
植物園の成り立ちと歴史
この植物園の起源は13世紀まで遡りますが、現在の場所には1883年に設立されました。 この地はもともと17世紀のコルシーニ宮殿の私的庭園であり、1659年から1689年までスウェーデン女王クリスティーナの邸宅でもあったそうです。
植物園内の樹木選定と植栽配置
植物園内には、3,000種以上の植物が展示されており、多彩なエリアが設けられています。
ヤシの並木道:入口近くには壮観なヤシの並木には野鳥が巣を作り自然生態系の営みが訪問時に迎えてくれました。
日本庭園:造園家・故中島健氏の伝統的な日本の造園技術(滝の石組、池、東屋)を取り入れたエリアで、静寂と調和、趣き、滝の流れの美を体験できます。イタリアの都市部の中でも日本の渓流の自然を表す和の庭園にいるようです。
竹林歩道:世界各国の多種多様な竹が植えられ、遊歩道は静けさと異国の雰囲気を醸し出しています。
薬用植物園:300種以上の薬用植物が集められ、教育的な展示が行われています。
多品目の葡萄の栽培:多様なブドウ品種を栽培することで、遺伝的多様性、栽培方法、病害虫への抵抗性、気候変動への対策などを研究しています。
近年の取り組みとして、「Tiny Forest®」というプロジェクトが進行中で、多様な在来植物種を密集して植栽し、自己維持可能な生態系の形成を目指しています。


ヴァチカン庭園(Giardini Vaticani)
ヴァチカン美術館(Musei Vaticani)から見えるヴァチカン庭園は、ヴァチカン市国の約3分の2を占める広大な庭園が1279年に設立されました。ミケランジェロも設計に関わった歴史あるサンピエトロ大聖堂の後ろ側に広がる庭園です。
1279年、教皇ニコラウス3世が教皇庁をラテラノ宮殿からヴァチカンに移し、果樹園(pomerium)、芝生(pratellum)、庭園(viridarium)を含む庭園を設立し、その後に幾何学的なデザインや自然の風景、美しい花壇の3つの異なるスタイルが取り入れ、現在も美しい庭園の維持がされています。
ヴァチカン庭園には、地中海性気候に適したイタリアカサマツ(Pinus pinea)、レバノンスギ(Cedrus libani)、糸杉(Cupressus sempervirens)などの樹木が多く植えられており、植栽や芝生の手入れの行き届いた広大な庭園は清々しくなります。


イタリア・ローマと千葉県の気候について
イタリアと千葉県では気候や降水量による多湿・乾燥の特徴と違いがありますが、四季があり日本でも人気があり良く植える(キョウチクトウ、クリスマスホーリー、マサキ、斑入りマサキ、ヤシ類、オリーブ、葡萄、トベラ、ヘデラ、松、ヒイラギ、竜のヒゲ、バラ、モミジ、ビワ、トキワマンサク、椿、ヒマラヤ杉、ポインセチア、パンジー、五色南天、紫陽花、ユリオプスデージー、百日紅、珊瑚樹、キャラ、ジャスミン、キリ、ザクロ、月桂樹、アガパンサス、竹)と多くの同じ植物がイタリアの人々の生活の身近な存在としてありました。これらの植物は生育適用範囲が広く丈夫な植物です。日本では5月頃発生し接触によるかゆみを引き起こす椿やチャノキに付くやっかいなチャドクガはイタリアでの発生は無いそうです。羨ましい限りです(笑)。次回はイタリア北部・スイス南部での庭園メンテナンス・工事視察の様子をお届けします。